病院や健康診断の検査で何がわかる?代表的な17の検査を紹介します

それぞれの検査に意味がある

病院に行ったり、健康診断を受けたりする際は、様々な検査を行います。何となく目的がわかりそうなものから、専門知識がないとなかなかわかりづらいものまで様々ですが、代表的な検査については

  • どんなことをするのか
  • 何のために行うのか

を知っておいた方がよいでしょう。

ここでは、病院や健康診断で行われる代表的な17の検査を紹介しましょう。

なお、大切なのは何らかの異常があり「要精密検査」「要治療」と伝えられた場合は、すぐに医療機関を受診することです。放置しておくと万が一のことが起きる原因にもなりかねないので注意しましょう。

1.診察等

  • 問診
  • 計測(身長、体重、肥満度・標準体重、腹囲)
  • 視力測定
  • 聴力測定
  • 胸部聴診・腹部触診

を行います。

問診

問診とは、医師からの質問に答えて現在の自分の健康状態を確認することです。健康診断の場合、予めアンケート形式の問診票に記入し、医師と確認しながら進めるのが一般的でしょう。

計測

計測の際には以下の3つの指標も併せてチェックされます。

BMI18.5~25未満(標準値22)
<算出方法> 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)=BMI値
標準体重<算出方法> 身長(m)×身長(m)×22 =標準体重
腹囲男性:85cm未満
女性:90cm未満

視力測定

近視や遠視、乱視と言った屈折異常を調べるためのものです。コンタクトや眼鏡を使っている人は必ず持参しましょう。

また、単純に視力を測定するだけでなく、白内障や緑内障など、急激な視力の低下を引き起こす病気がないかチェックする目的もあります。

聴力測定

ヘッドホンをつけた状態で高周波の音(4000Hz)と低周波の音(1000Hz)を用いて、それぞれを一定音量ずつ上げていって耳の聞こえをチェックする検査です。外耳炎、内耳炎、老人性難聴など聞こえ方に影響を及ぼす病気がないかどうかを確認します。

胸部聴診・腹部触診

胸部聴診は、肺の呼吸音や心臓の収縮・拡張の音を拾い、不規則な呼吸や病的な雑音がないかを確認するために行います。

一方、腹部触診は直接手でお腹を触り、痛む箇所やしこりなどの異常がないか確かめます。仮に異常があった場合、さらに画像検査などを行っていく流れです。

2.血圧の検査

人間の体には血管が張り巡らされ、体中に血液を運んでいます。そして、血圧とは血液が流れることで血管の内側にかかる圧力を指す言葉です。

本来であれば、適正な範囲内で保たれていますが

  • 塩分の取りすぎ
  • 食べ過ぎ
  • 運動不足
  • 肥満
  • ストレス
  • 睡眠不足
  • 喫煙

などの理由で血圧が上がってしまうことが考えられます。

血圧が適正な範囲を超えて上がってしまうこと = 高血圧は、動脈硬化や腎臓病、脳疾患や心疾患など様々な病気の発症に関係しているため注意が必要です。

そこで、座った状態で電子式の血圧計で血圧を測り、高血圧(または低血圧)でないかを調べます。

なお、基準値は

  • 最高血圧:130㎜Hg未満
  • 最低血圧:85㎜Hg未満

です。

出典:血圧 | 健診・保健指導 | 全国健康保険協会

3.脂質の検査

採血を行い、血液中のコレステロールや中性脂肪の状態をチェックします。

血液中のコレステロールや中性脂肪の数が多くなりすぎると、動脈硬化など他の病気の原因になるため注意が必要です。一方、あまりに少ない場合は肝硬変や栄養失調など他の病気が疑われるため、やはり注意しましょう。

項目 詳細 基準値
総コレステロール血液中に含まれるすべてのコレステロールを測定した総量140~199mg/dl
中性脂肪 体内にある脂肪の一種。血液中の量を測定して異常の有無を調べる 150mg/dl未満
HDLコレステロール コレステロールのうち、HDL(高比重)リボタンパクに含まれるコレステロール。善玉コレステロールともいう 40mg/dl以上
LDL-コレステロール コレステロールのうち、LDL(低比重)リボタンパクに含まれるコレステロール。善玉コレステロールともいう 120mg/dl以上

4.肝機能等の検査

こちらも、血液を採取し、血液中の様々な指標を測定して異常がないかを調べるものです。基準値から外れた指標があった場合

  • 急性・慢性肝炎 
  • アルコール性肝炎 
  • 脂肪肝 
  • 肝硬変 
  • 心筋梗塞
  • 胆道の病気(胆道炎、総胆管結石)
  • 脱水症 
  • 膠原病 
  • 感染症
  • 腎臓病

など様々な病気が隠れている可能性があるので、精密検査をしましょう。

主要な項目をまとめました。

項目 詳細 基準値
GOT(AST)GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)もしくはAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)のこと。肝細胞や腎臓、心臓の細胞内に多く含まれているが、肝臓や心臓で何らかの異常が起きると血液中にこれらの物質が溶け出すため数値が高くなる30U/l以下
GPT(ALT)GPT(グルタミン酸ピルビン酸 トランスアミナーゼ)もしくはALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)のこと。肝細胞に多く含まれているため、肝臓や胆道に障害が起きるとこの数値が高くなる30U/l以下
γ-GTP肝臓、腎臓、すい臓、小腸などに含まれている酵素。お酒の飲み過ぎや揚げ物の食べ過ぎ、胆石など胆汁が流れにくくなる病気になるとこの数値が高くなる50U/l以下
ALPALP(アルカリフォスファターゼ)は肝臓や胆道、骨、小腸、腎臓などに含まれる酵素。肝臓障害や胆道の病気で胆汁が排泄されなくなると血液中にあふれ出てきて数値が高くなるため、肝機能障害の有無を調べる指標としても使われる38~113U/l未満
総蛋白

血液中に含まれる100種類のたんぱく質のこと。肝臓や腎臓の機能が低下すると総蛋白量も低下するため、これらの機関に異常が生じていないかの指標として使われる6.5~8.0g/dl
アルブミン
血清中に含まれるたんぱく質の1つ。異常値を示した場合、腎機能障害や肝機能障害が疑われる4.0g/dl以上
総ビリルビン胆汁色素と呼ばれ、胆汁の主成分となっている色素の1つ。本来は胆汁とともに排泄されるものの、肝臓・胆道の病気で胆汁が排出されない場合は血液中にあふれ出す1.1mg/dl以下
LDH肝臓、心臓、骨格筋など体の様々な部分に含まれている酵素。何らかの原因で細胞がダメージを受けると血液中にあふれ出てくるため、これを調べて体内に異常がないかを探る230U/L未満
アミラーゼでんぷんなどの糖質を分解する消化酵素の1つ。膵臓、唾液腺、耳下腺などから分泌されるため、これらの器官に異常が生じていないかを調べるために測定する50~200

5.代謝系の検査

血液中や尿中の様々な指標を測定して異常がないかを調べるものです。
基準値から外れた指標があった場合

  • 糖尿病 
  • 甲状腺機能亢進症 
  • 肝硬変
  • 痛風
  • 高尿酸決勝

など様々な病気が隠れている可能性があるので、精密検査をしましょう。

主要な項目をまとめました。

項目 詳細 基準値
空腹時血糖
血液中に含まれるブドウ糖(血統)を空腹時に調べる。通常は一定の範囲内に収まっているものの、糖尿病の場合は一定の範囲を超えるため、この性質を利用して病気の有無を調べる100mg/dl未満
尿糖(半定量)

尿中のブドウ糖のこと。本来、尿中にブドウ糖は出てこないものの、血糖値が高すぎると腎臓での処理が追い付かないため尿中に出てくることがある「陽性」となった場合は糖尿病の疑い
血清尿酸

尿酸とは、細胞が生まれ変わる際に作られるプリン体という物質が分解されてできる最終代謝産物。本来であれば尿と一緒に排出されるものの、病気などが原因で過剰に作られたり、排出できていない場合は血液中に貯まるため、血液中の尿酸の濃度を調べて病気の有無を判断する7.0mg/dl以下
ヘモグロビンA1c血糖値が高い状態が続くと、血液中のブドウ糖とヘモグロビンが結合してしまう。結合してできた物質のグリコヘモグロビンの比率を調べると、過去1~2カ月の血糖値の状態を知ることができるため、糖尿病などの病気がないかの手がかりにできる5.6%未満 (NGSP値)

6.血液一般の検査

血液には、全身の健康状態が良く反映されると言われています。これは、血液が全身を巡って、体の隅々に栄養や酸素を届けるとともに、二酸化炭素や老廃物を回収する役目を担っているためです。

このため、全身の状態を把握するための一助として、一般的な血液検査が行われます。主要な指標についてまとめました。

項目 詳細 基準値
ヘマトクリット値


一定量の血液の中に含まれる赤血球の容積の割合(ヘマトクリット値)を調べることで、主に貧血の有無を調べる男性 38.0~48.9%
女性 34.0~43.9%
血色素測定

赤血球中の血色素(ヘモグロビン)の割合を調べることで、貧血の有無を判定する男性 13.0~16.6 g/dl
女性 11.4~14.6 g/dl
赤血球数

何らかの理由で赤血球が減少すると、酸素運搬機能が低下するため貧血になる。そこで、赤血球の数値を調べることで貧血などの病気が隠れていないか調べる男性 400~539 (×10⁴/㎜³)
女性 360~489 (×10⁴/㎜³)
白血球数白血球は体内に侵入した細菌・ウイルスなどの異物から体を守る免疫機能を担う。そのため、この数値を調べることで、膠原病・感染症・アレルギー疾患・白血病・がんなどの病気が隠れていないかがわかる33~89(×10²/㎜³)
血小板血管が破れて出血した際、血小板の働きにより出血が止まる。体にとって大事な成分だが、血小板が多すぎると血栓ができたり、逆に少ないと血が止まりにくかったりなどのトラブルが起きる。そのため、血小板の数を調べ、トラブルの原因となっている病気がないか調べる14.0~35.9(×10⁴/㎜³)未満

7.尿・腎機能の検査

尿や血液に含まれる成分は、腎臓機能の異常と関連しているものがたくさんあります。そのため、尿や血液の一定の成分を調べることで、腎臓機能の異常を引き起こす病気の有無がわかる仕組みです。

尿蛋白(半定量)

本来、尿に尿たんぱくはほとんど排出されません。しかし、腎臓病などの病気が原因で、尿たんぱくが通常よりも多く排出されることがあります。そこで、尿たんぱくの量を調べれば、腎機能障害などの病気がわかる仕組みです。

尿潜血

人間の尿は、腎臓・尿管・膀胱・尿道などの部分を通って出てきます。この通り道となっている部分のどこかに出血があった場合、尿中に血液が混じることから、異変に気付く指標として用いられているのです。

なお、検査を行う際は試験紙を用います。色が変わったら「陽性」と判断し、尿沈着で尿中の赤血球数を調べる流れです。

尿沈渣

尿が体外に排出されるまでには、腎臓から尿道を通ります。この尿道のどこかに異常があると、赤血球や白血球、上皮細胞などの不純物(尿沈渣)が混入するのです。そこで、顕微鏡で尿を観察し、尿沈渣がないか調べることで、病気を早期に発見できます。

血清クレアチニン

クレアチニンとは、体内でエネルギー源として利用されたたんぱく質が分解・代謝されてできた老廃物です。本来、クレアチニンの一部は腎臓でろ過され、尿とともに排出されます。

しかし、腎臓の機能が低下すると血液中にも増えてくるという性質も有しているのです。そこで、血液検査を行い、この数値を調べることで腎機能障害を見つけるという検査が行われています。

なお、クレアチニンは筋肉量に比例するため、基準値は女性より男性の方が多くなっています。

  • 男性 1.10 ㎎/dl以下
  • 女性 0.80 ㎎/dl以下

また、腎臓病だけでなく、筋肉が関連する病気(筋ジストロフィーなど)がある場合も、この数字に異常が現れるので知っておきましょう。

8.呼吸系の検査

肺には空気を出し入れする「換気機能」と、血液中の酸素と二酸化炭素を交換する「ガス交換機能」という2つの機能があります。

このうち、一般的に行われる肺活量検査は、換気機能がうまく働いているかを調べるためのものです。実際の検査は、スパイロメーターという専用の装置を使って行われます。

経験がある人も多いかもしれませんが、息をいっぱいに吸い込み、それを一気に吐き出した空気の総量を図る流れです。そして、測定された肺活量(努力肺活量)と年齢・性別・身長などの条件を加味した予想肺活量との比較を行い、異常がないかを探ります。

なお、異常が見られる場合に考えられる病気として

  • 肺気腫
  • 慢性気管支炎
  • 気管支拡張症 
  • 肺線維症 
  • 気管支ぜんそく 
  • 間質性肺炎

などが挙げられます。

9.心臓の検査

人間の心臓は、収縮と拡張を繰り返しながら全身に血液を送り出しています。そこで、心筋が収縮する際の電気刺激を体に貼り付けた電極でとらえ、時間的な変化を波形で表して記録する検査(心電図検査)を用いることで、心臓に何らかの異常が生じていないかを調べられます。

なお、一般的に行われる12誘導心電図検査とは、電飾を6ヵ所、両手首・両足首にそれぞれ1ヵ所ずつ貼り付けて行うものです。痛みもなく、2 ~ 3分程度で終わります。

10.肺の検査

主に胸部X線検査が行われます。撮影装置に胸部を押し当て、息を深く吸った状態で止めた上で背後からX線を照射し撮影する流れです。

本来、肺は黒っぽく、骨格や心臓などは白っぽく映りますが、肺に白い影があった場合は肺炎、気管支炎、肺結核、肺がんなどの病気が疑われます。

11.胃の検査

主に行われているのは

  • 胃部X線検査
  • 胃内視鏡検査

の2つです。

胃部X線検査

健康診断でよく行われているのが、上部消化管X線造影撮影です。つまり、造影剤(バリウム)と発泡剤を飲んだ上で専用の検査台に上り、撮影を行います。画像に映し出された形状を元に、狭窄や偏位・変形、炎症、腫瘍、がんなどがないかを調べる方法です。

胃内視鏡

一方、胃内視鏡検査は直径1ミリほどの細長い管の先にレンズをつけた内視鏡を使って行います。これを口から挿入し、消化管の内部を直接観察する検査です。

モニターに映し出された画像を元に、食道、胃、十二指腸の病変を調べます。
また、医師が必要と認めた場合、組織の一部を内視鏡についている鉗子で採取して調べる(生検)こともあります。

12.大腸の検査

大腸に潰瘍やポリープ、がんなどの病気があると、出血を起こして便に血が混じります。

そこで「免疫学的便潜血検査」といって、
大便を採取し、特殊な試薬を使って分析することで、出血の有無を調べます。

この検査により

  • 大腸がん 
  • 大腸ポリープ 
  • 裂肛 
  • 痔 
  • 胃がん 
  • 胃・十二指腸潰瘍

などの病気がないか調べられる仕組みです。

13.眼底検査

黒目 = 角膜は透明の組織であり、特殊な装置を用いてフラッシュを充てると、目の底 = 眼底の様子が観察できます。眼底には網膜と血管が張り巡らされているため、ここの様子を観察すれば高血圧や動脈硬化、糖尿病に伴う網膜症や白内障・緑内障などの眼の病気を発見できるのです。

なお、実際は特殊な目薬(散瞳薬)を使って瞳孔を広げて眼底カメラ・眼底鏡を使って調べる方方法が主流でしたが、昨今はそのまま眼底カメラを使うこともあります。

14.腹部超音波検査

体に超音波を当てると反射波が返ってきます。これらをコンピューターを用いて画像化すると、肝臓、胆嚢、腎臓と言った臓器・組織の様子が調べられる仕組みです。

仮に腫瘍や結石があった場合、その部分が白い像となって浮かび上がるため、早期に病気を発見できます。

15.肝炎ウイルスの検査

B型肝炎、C型肝炎など一部の肝炎は、ウイルスによって引き起こされます。血液検査を行うことで、これらのウイルスに感染しているかを調べる検査です。

なお、血液中に

  • HBs抗原の存在が確認された場合:B型肝炎ウイルスに感染している
  • HCV抗体の存在が確認された場合:C型肝炎ウイルスに感染している

ことが考えられます。早期に適切な治療を行うことで普通の生活が送れるようになるので、陽性と診断された場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

16.子宮がんの検査

女性のみの検査です。

子宮頸がん検査

子宮の入口(頸部)に発生するがんを調べるためのものです。検査は子宮頸部付近の細胞を綿棒などでこすりとり、顕微鏡でがん細胞の有無を調べます。

子宮体がん検査

一方、子宮の奥(体部)に発生するがんを調べるための検査も行われています。細いチューブのような器具で子宮内膜の細胞を少しとり、正常な細胞かどうかを顕微鏡で診断するのが一般的な方法です。

経膣超音波検査

内診台に座り、プロープと呼ばれる細い棒を膣の中に入れます。この先からでる超音波が子宮や卵巣に反射する様子をモニターで確認し、異常がないかを調べます。

17.乳がんの検査

こちらも、子宮がんの検査と同様、女性のみの検査です。

乳房視診・触診

医師が乳房を見てひきつれ・腫れ、皮膚のただれや異常分泌がないかを観察するのに加え、しこりがないかを触って確認します。なお、しこりがあった場合は大きさ、形、表面の状態も併せて確認します。

加えて、乳房以外にもわきの下や鎖骨の上のリンパ節も調べます。

超音波検査(エコー)

乳房に超音波を当て、その反射波を画像に映し出すことで乳房内部の状態を知るための検査です。これで乳房内の病変の有無、しこりの大きさ、わきの下など周囲のリンパ節への転移の有無がわかります。

乳房X線検査(マンモグラフィー)

乳房を透明なプラスチックの板に挟んだ状態でX線撮影を行い、画像をもとに病変がないかを確認します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です