「何科の病院に行けばよいかわからない」ときに活用すべき手段
自分や家族の体調が悪かったとしても
- その原因が何であるのかを突き止めるのが容易でない
- 今すぐに救急車を使ってでも病院に行くべきか、様子を見るべきかわからない
- そもそも何科の病院・クリニックに行けば良いのかわからない
ことだって往々にしてあります。
今すぐにでも救急車を呼ばないといけないほど具合が悪いなら別ですが、救急車の適正利用の観点からも、まずは落ち着いて
- 自分(家族)は今すぐ病院に行くべきか、様子を見るべきか
- 行くとすれば何科の病院・クリニックに行けば良いのか
を冷静に考えましょう。
「かかりつけ医に相談する」のが理想だけど
仮に、自分や家族にかかりつけ医といえる医師がいるなら、相談するのが一番の早道でしょう。この方法のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
ある程度的確な判断をしてもらえる
かかりつけ医である以上、普段から自分や家族の状況を把握しているはずなので、いつもとは違う体調の悪さを感じたとしても
- 何が原因で生じているのか
- 緊急性が高いのか、それともしばらくは様子を見て良いのか
について、的確な判断を下してくれるはずです。
基本的にほとんどの医師は、受診した患者の様子を見て的確な判断をし、その上で治療を行うよう日々尽力していますが、人間のやることである以上、初見での判断を間違ってしまうことだって考えられます。
「なるべく早めに的確な診断をしてもらいたい」と思うなら、やはりこの方法が望ましいでしょう。
デメリット
いつも対応してもらえるとは限らない
一口にかかりつけ医と言っても、24時間365日対応してもらえるとは限りません。
大学病院や総合病院など、大規模な病院に勤務している医師の場合、非番の日に連絡したとしても対応してもらうのは難しいはずです。
また、クリニックを開業している医師であっても、本来の開院日・時間以外の時に連絡をした場合、どこまで対応してくれるかはケースバイケースです。
- いわゆる「休日当番医」になっていた
- 自宅の一部をクリニックに改造している、もしくは隣接しているのですぐに出てこれる
など、ある程度条件が揃っていれば対応してくれる医師もいますが、そうでない場合にまで「必ず対応してくれること」を求めるのは酷でしょう。
そもそも、普段の健康状態がすこぶる良い人であれば、いわゆるかかりつけ医がいないことだって考えられます。
「かかりつけ医にすぐ相談できる」とは限らない以上、別の手段も考えておきましょう。
即救急車はNG
「自分や家族には判断できない、かかりつけ医にも相談できない」となった場合、もしかしたら「それなら、救急車を呼べば良いのでは?」と思うかもしれません。
しかし、この方法は一部の例外を除き、できる限り取らないほうが賢明でしょう。
「大したことがないのに救急車を呼ぶ人が多く、本当に必要な人が救急車を使えない」という事態につながりかねないからです。
東京消防庁が発表したところによれば、管内の令和元(2019)年中の救急出場(簡単に言うと、119番通報により救急車が出動すること)件数は82万5,929件でした。38秒に1回の割合で出場していた計算になります。
そして、これだけハイペースで救急出場が行われていると、通報を受けてから現場に救急車が到着する時間は当然遅くなります。
こちらも東京消防庁が発表したデータに基づいていますが、令和元年中の場合、東京消防庁の管内において119番通報を受けてから現場に救急車が到着するまでの時間は平均で6分35秒でした。
平成27(2015)年の7分45秒に比べるとだいぶ縮まってきてはいますが、それでも「必要がないのに救急車を呼ぶ人がいる」状況は続いているでしょう。
「今すぐにでも救急車を呼ばないと命が危ない」という状況ならまだしも「ちょっと具合が悪い」「いつもと調子が違う」といった程度で救急車を呼ぶのは、絶対に避けましょう。
手段1.電話相談を利用する
現実的な対処法としては、救急車を呼ぶ前に医師・看護師などの専門家に相談することが挙げられるでしょう。
具体的な手段として考えられるのは、都道府県などの地方自治体が運営する電話相談を利用することです。
救急安心センター事業とは
有名なものの1つに、一部の都道府県で行われている「救急安心センター事業」があります。
これは、救急車の適正利用を目的として運営されている事業です。
- すぐに病院に行くべきか
- 救急車を呼ぶべきか
迷った場合に「#7119」に電話をかけると、医師や看護師等の専門家が救急相談に応じてくれます。
もちろん、症状を聞いた上で「何科の病院・クリニックに行けば良いのか」も提案してくれるので、冷静に状況を話しましょう。
手順は以下の通りです。
- #7119に電話をかける
- オペレーターもしくは自動音声による案内がある(地方自治体によって異なる)
- 「救急電話相談」もしくは「医療機関案内」のいずれか希望する方を選ぶ
- 「救急電話相談」を選んだ場合は、医師・看護師・相談員が対応し、現在の状態をヒアリングした上で救急出動要請を行うか、受診可能な医療機関の案内を行うかのいずれかの対応がある
- 「医療機関案内」を選んだ場合は、その時点で受診可能な医療機関の案内が行われる
メリット
重篤な状態だった場合救急出動要請まで行ってくれる
この方法のメリットとして「重篤な状態だった場合、すぐに救急出動要請を行ってくれる」ことが挙げられます。
医療に関する知識がない人にとっては大したことがないように見えても、知識がある人から見たら「すぐにでも治療を受けさせないと危ない」と判断されることだってあるためです。
デメリット
一部の地域でしか行われていない
救急安心センター事業に限って言えば、実施されている地域はごくわずかです。以下の表や日本地図を見てもわかるように、都道府県単位でこのような事業が行われているところはごくわずかです。
なお、こちらの日本地図内で一部色が塗られていますが、色ごとに意味合いが違います。
- 赤色:都道府県単位で救急安心センター事業を運営している
- ピンク:一部の市町村で救急安心センター事業を運営している
- オレンジ:救急安心センター事業に類似した事業を、別の名前・番号で運営している
と読み替えましょう。
オレンジに塗られている都道府県について、事業名および番号をまとめたのが、こちらの表です。
都道府県名 | 事業名 | 電話番号 |
---|---|---|
山形県 | 山形県救急電話相談 | #8500 |
栃木県 | 救急電話相談窓口 | #7111 |
千葉県 | 救急安心電話相談 | #7009 |
香川県 | 一般向け救急電話相談 | #7899 |
熊本県 | 熊本県夜間安心医療電話相談事業 | #7400 |
いずれにしても、実際にこのような「都道府県や市区町村など、地方自治体が主導する電話相談」が行われている地域はごくわずかである以上「誰でも簡単に相談できるとは限らない」点に注意が必要です。
なお、子ども(15歳未満の乳幼児、小学生、中学生など)については、全国規模で電話による医療相談が行われています。
緊急時は「#8000」にダイヤルすると、大人(15歳以上)の場合と同じように、医師・看護師などの専門家が相談に乗ってくれる仕組みです。
手段2.アプリを使う
地方自治体が主導する電話相談が使えない地域の人に使ってほしい手段が、アプリやWebを用いて判断することです。
「Q助」とは
「Q助(きゅーすけ)」という全国版救急受診アプリ・Webサイトがあります。
これは、総務省消防庁が大阪大学医学部付属病院の協力のもと開発したアプリ・Webサイトで、アプリ・Webサイト上に表示される質問に答えていくと
- 今すぐ救急車を呼びましょう
- できるだけ早めに医療機関を受診しましょう
- 緊急ではありませんが医療機関を受診しましょう
- 引き続き、注意して様子をみてください
のいずれかの結果が出てくる仕組みになっています。
なお、Webサイト版の場合はこのような表示になります。
メリット
指示に従って操作するだけである程度の判断ができる
この方法のメリットとして挙げられるのは「指示に従って操作していくだけで、ある程度の大まかな方針が判断できる」ことでしょう。
診断結果が表示される際、自分がアプリ・Web上で選択した症状の一覧がリストとして表示されるので、救急隊員や医師に伝えることで、より適切な処置・治療を受けるのに役立つはずです。
デメリット
100%正確とは限らない
あくまで患者もしくは家族の主観に基づいて項目を選んでいくので、100%正確な結果が出るとは限りません。
- 本人は苦痛を訴えていて、 アプリ・Web上でも悪い結果が出たが、実はそこまで緊急性が高い状態でなかった
- 本人は「大したことがない」と思っていて、アプリ・Web上では悪い結果が出なかったとしても、実は重篤な状態だった
ということも起こり得ます。
もちろん、前者の場合は、「大丈夫だったんだ、良かったね」と安心できるでしょう。
しかし、後者の場合は判断を誤ったことで万が一のことが起きてしまう恐れもあるので
- 1時間ほど間隔をおいてもう一度試してみる
- 患者本人ではなく、他の家族が試してみる
など、より客観的なデータを取れるよう、工夫をすることが必要です。
こういうときはすぐに救急車を呼ぼう
むやみやたらに救急車を呼ぶのは控えたほうが良いですが、「今すぐにでも呼ぶべきケース」はもちろん存在します。
- 大人の場合
- 子どもの場合
- 高齢者の場合
に分けて紹介しましょう。
大人の場合
子どもの場合
高齢者の場合
落ち着いて冷静に対応しよう
体調が急に悪くなった場合、しばらく様子を見るか、すぐにでも病院を受診すべきかは、その時の個々の状況によって異なります。
普段と様子が違うと慌ててしまうかもしれませんが、落ち着いて対応しましょう。
いずれにしても、普段から病院やクリニックにかかっていたようであれば、そのときの状況を伝えられるように常に状況を整理しておくのが肝心です。
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