病院選びは自分と家族の人生に影響を及ぼす
ケガや病気をした際「どんな病院で治療を受けるか」は非常に重要です。医師やスタッフの対応がつっけんどんなら「この人たちに任せて大丈夫か」と不安を感じるはずだし、治療や薬に関する丁寧な説明がないと「一体自分はこの先どうなるのだろう」と心配でしかないでしょう。
信頼できない病院に自分や家族を任せてしまうと、日々不安を感じながら過ごさないといけない上に、本当は適切な治療を施せたにもかかわらず、手遅れになってしまうことだって考えられます。
いわば、病院選びは自分と家族の人生に影響を及ぼす重大な事柄であるため、慎重に進めたいところです。
何をもって病院の良しあしを判断するかは難しいところですが、1つの基準として必ず確認すべき10のチェックポイントを解説しましょう。
1.電話対応
多くの病院では、初診の際に電話予約をするよう求められています。専用の電話番号に電話をかけ、担当者とやり取りをしながら予約を進めていくのですが、この際の対応にも注意しましょう。
悪い電話対応の例をまとめました。
声が暗い
良く言えば落ち着いているのかもしれませんが、聞いていて「この人の声、暗い」と思うようなら要注意です。少しトーンが高いくらいのほうが、明るい印象に聞こえるでしょう。
早口
相手が緊張して早口で話しているのかもしれませんが、丁寧に、ゆっくり、はっきりと話してくれた方が聞きやすいはずです。
聞き取りづらい
もごもご話していて聞き取りづらいと、そもそも相手が何を言っているのかわからないかもしれません。
説明があいまい
ある意味、もっとも問題になるのがこれでしょう。何か質問をしても的確に答えてもらえない場合は、不信感を抱かざるを得ないからです。もちろん、担当者だけですべてが完結するのが理想ですが、難しい場合は「わかる者におつなぎしますので、少々お待ちください」と対応を引き継いでもらうほうがスムーズです。
2.窓口の場所
病院に行くと、最初に初診受付などの専用の窓口で手続きをし、診察を受けるための準備を進めていきます。しかし、窓口がわかりにくい場所にあった場合は、どこに行けばよいのか右往左往するはめになり、ストレスが溜まり勝ちです。
ストレスを避けるためには、できる限り「どこに何があるのか」わかりやすいレイアウトになっている病院の方が良いでしょう。
もちろん、院内が工事をしていたり、感染症対策などの理由で一時的に独自の順路を設けているケースもあります。この場合、窓口がわかりづらくなるのは仕方ありませんが、スタッフからの案内や掲示があれば問題ないでしょう。
3.院内の清潔度
病院には病気の影響で免疫力が下がっている人も多く訪れます。100%感染症を防げる対策はありませんが、院内は清潔であるに越したことはありません。
施設が老朽化するのは仕方ないものの
- 廊下にゴミが落ちていたり、ほこりが溜まっていないか
- トイレや洗面台が水浸しになっていないか
- 手すりやエレベーターなど人が触るところは定期的に掃除をしているか
- 空気清浄機や抗菌コーティングなど技術的な衛生対策も導入しているか
などの配慮が行き届いているかを確認しましょう。
4.スタッフの態度
既に触れた電話での対応とも共通しますが、病院内で働くスタッフの態度にも注目しましょう。
医師、看護師などの医療従事者はもちろん、事務職員、警備担当者、清掃担当者など、その他のスタッフの態度が悪かったら不安になるのは当然です。
- 信頼関係が築けていないにも関わらずいわゆる「タメ口」を使う
- 体調があまりに悪くても融通を利かせた対応をしてくれない
- 職員が仕事をせず立ち話ばかりしている
- 質問したことに答えてもらえない
など、目に余ることがないか確認するのをおすすめします。
もちろん、冬の寒い時期など院内に患者が集中している場合にまで丁寧な対応を望むのは厳しいかもしれませんが、それでも「さすがにこれはない」と違和感を覚えた場合は、患者向けの相談室に一度相談してみましょう。
病院によっては投書箱や問い合わせフォームを設けていることがあるため、投書してみるのも1つの手段です。
5.待ち時間に対するフォロー
大きな病院であれば、患者も多くなるため待ち時間が長くなるのもある程度は致し方ありません。
近くで大きな事故があったり、急患が殺到したりした場合は、優先順位を考えて対応しなくてはいけないため、余計に待ち時間が長くなるでしょう。
この辺りは仕方がないと割り切るしかありませんが「待たせること」に対する病院側のフォローがあるかはチェックしましょう。
- 現在の状況
- 後どのくらい待つことになりそうか
- 医師を変更する、後日に予約を取り直すなどの代替案
について質問をしてみると良いでしょう。
6.医師の話を聞く態度
病院を変えたいと思ったり、医師ともめてしまったりする元凶の1つに「医師が話を聞いてくれない」ことが挙げられます。
近年は、医療現場においても患者へのインフォームドコンセントを重視する観点から、医学部の授業でも傾聴、言語的・非言語的コミュニケーションスキルを磨くためのカリキュラムが取り入れられています。
ある程度「話を聞く技術」を身につけた上で現場に出ているはずですが、中にはプライドが非常に高く「自分の意見に従わないなら治療を受けなくてもよい」と言わんばかりの高圧的な態度をとる医師もいるのです。
このような医師に当たってしまったら、別の曜日に変更するなど、できるだけ関わらない方向で対処しましょう。
電子カルテが普及したせいもあるかも
また、大きな病院であれば、電子カルテを用いるため、医師が話を打ち込むことに夢中になって話を聞いていないように思われることも多々あります。
医師は、限られた時間の中で業務を遂行できるよう懸命に努力しているため、ある程度は致し方ありません。話を聞いてもらうためには、事前にメモを作っていき見せるなど、患者側からも工夫が必要でしょう。
なお、メモに対する医師からのフィードバックは、録音しておくと後から聞き返せて便利です。「診察ノオト」では、簡単な操作で医師が話している様子を録音できます。
7.治療内容に関する丁寧な説明
がんや心疾患、脳血管疾患など長期にわたる治療が必要な病気であればあるほど、医師が治療内容に対して丁寧な説明をしてくれるかが重要になります。
- どういう治療を行うのか(がんの場合は抗がん剤治療、放射線治療など)
- どの程度の入院、通院が必要になるか
- 治療に伴うメリット、デメリット
- 家族や友人・知人などに求められる配慮
など、治療やそれに伴って生じる問題にまで踏み込んだ丁寧な説明があるかどうか、必ず確認しましょう。
また、医師の説明には専門用語も多々用いられることがあります。しかし、これらの専門用語は普段の生活で使わないものも多く、知識がなければ一度聞いただけではわかりません。
踏み込んで質問をしても、丁寧に答えてくれるかも確認しましょう。
なお、抗がん剤治療など専門的かつ高度な治療を行う場合は、患者への説明に使うリーフレットが用意されています。製薬会社などが作成していますが、補助資料として医師や看護師から渡してもらえるとなお親切です。
8.他の診療科、病院の紹介
現代の医学は高度かつ専門化が進んでいるため、医師も「自分では対応できない」と思った場合は、他の診療科や病院を紹介してくれます。
しかし、先ほどの説明と同様、医師の中にも「自分の意見に従わない患者は来なくて良い」と思っている人が一定数いるのです。
「自分のところに来た患者は、自分が面倒を見る」という強い責任感の裏返しかもしれませんが、あくまで治療を受ける目的は「健康を取り戻すこと」である以上、必ずしもうまくいくとは限らないでしょう。
1つの選択肢として、他の診療科での診察の提案や、他の病院への紹介を快く提案してくれるかどうかも、医師との相性を図るバロメーターになります。
9.薬に関する説明
病気やケガの治療には、薬を用いることが多々あります。薬を処方するのも医師の重要な役目ですが
- 何のためにこの薬を処方するのか
- 飲み方や日常生活において気を付けるべきことはあるか
- 万が一、副作用と思われる症状が出たらどうすれば良いか
について、丁寧な説明があるかどうかも確認しましょう。
なお、発売開始から日が経っていない薬や、使用するにあたって注意が必要な薬については、製薬会社がリーフレットを作成して配布しています。医師の説明だけではわかりづらい場合は、このようなリーフレットも活用しましょう。
気が利く医師や看護師であれば、必要なものをとりまとめて渡してくれるはずですし、薬剤師に渡すよう指示をしてくれることもあります。
10.入院計画に対する丁寧な質疑応答
誰だって、自分や家族が入院するとなったら、不安を感じるはずです。そのため
- なぜ入院しなくてはいけないのか
- どのくらいの期間入院することになるのか
- 退院までどんな治療や検査をするのか
- 費用はどれくらいかかるのか
など、生じてくる疑問に対して丁寧に答えてくれるかどうかも「この病院は自分にとって良い病院かどうか」を確かめる上で重要になります。
なお
- 入院にかかる費用
- 入院中に必要なもの(自分で用意するのか、レンタルが使えるのか)
- 面会に関する決まり(1回あたりの時間、面会できる人の条件など)
の細かい部分については、入院窓口での対応になることがあります。ここでも、質問に丁寧に答えてもらえるかを重視しましょう。