利用する前に相談を!病院ともめないセカンドオピニオンの進め方

なぜセカンドオピニオンが必要なのか

がんや椎間板ヘルニアなど、長期にわたる治療が必要な病気にかかった場合、治療方法については患者自身もよく調べる必要があります。

主治医に全幅の信頼を置けるなら問題ありませんが、中には「他の医師の意見を聞いてみたい」と思う人だっているでしょう。

そのようなときに活用すべき手段がセカンドオピニオンです。

直訳すると「第二の意見」という意味になりますが、転じて「自身や家族の病気について、主治医以外の医師から意見を聴くこと」を指します。

希望する治療を受けるため

そもそも、なぜセカンドオピニオンが必要なのか、根本の部分を理解しましょう。

一言でまとめると「希望する治療を受けるため」です。

たとえば

  • 服薬を続けているけど、不快な症状が全く緩和されない
  • 外科手術を提案されているけど、他に治療法がないか探りたい

など、自分や家族の病気の治療に対して疑問や不安な点がある場合、他に治療法がないか探る権利が患者にはあります。

もちろん、まずは主治医に聞いてみることが最優先になるし、納得できる代替案を提案されたなら、それで進めて構いません。

しかし、納得できないまま漫然と治療を受けるのは、患者やその家族にとっては決してプラスにならないでしょう。

自身や家族が納得して治療を受けるためにも、セカンドオピニオンを有効活用したいところです。

日本ではまだまだ発展途上

実際のところ、日本でセカンドオピニオンを受ける患者はどれくらいいるのか、公的なデータをもとに考えてみましょう。

国立がん研究センターが2020年に行った調査によれば

  • 治療開始前にセカンドオピニオンについて、担当医から話があった人は34.9%
  • 実際にセカンドオピニオンを受けた人は19.5%

とかなり低い結果に終わりました。

出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「がん患者さんの診療体験・療養生活実態をがん対策に反映 患者約 2 万人を対象に患者体験調査実施」

ここまで低いのには、様々な理由が考えられますが、その1つとして挙げられるのが「セカンドオピニオンに対する医師・患者の誤解」です。

「主治医の意見が信頼できないから、セカンドオピニオンを受けに行く」というイメージを持つ人がいる、と考えるとわかりやすいでしょう。

実際、セカンドオピニオンの話を切り出しただけで不機嫌になる医師や、「セカンドオピニオンを受けるのは、主治医に対する裏切り」というイメージを持つ患者もいるのかもしれません。

しかし、最近では日本でもインフォームドコンセントの考え方が普及してきています。

インフォームドコンセントとは

医療行為を受ける前に、医師および看護師から医療行為について、わかりやすく十分な説明を受け、それに対して患者さんは疑問があれば解消し、内容について十分納得した上で、その医療行為に同意すること

出典:インフォームドコンセント:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]

という意味です。

この考え方に基づけば、患者やその家族が病気の治療に当たっての疑問を解消するために、あえて主治医以外の医師に意見を聴くのも重要でしょう。

仮に、主治医とそうでない医師とで治療方針や意見が一致すれば「やっぱり、この方法が現時点では正しいのか」と納得できます。

また、違っていたところがあったとしても、「この点についてもうちょっと、今の先生に聞いてみよう」と思えたなら、それはそれで有意義です。

セカンドオピニオンは主治医との信頼関係に基づいてなされるものであり、決して主治医に対する裏切りではないことを頭の隅に留めておきましょう。

なお、セカンドオピニオンを検討する際は、これまで主治医から提案されてきた治療法や、病気・ケガの経過を整理しておくと便利です。

手書きのメモやお薬手帳も重要な情報になりますが「主治医とどんなやりとりをしてきたのか」についての記録もあると、セカンドオピニオンを担当する医師はより一層判断をしやすくなります。

「主治医とどんなやりとりをしてきたのか」を記録するには、アプリが便利です。

音声を録音しておけるアプリ「診察ノオト」であれば、すぐにやり取りを記録できる上に、必要に応じて振り返りもできます。

セカンドオピニオンがそぐわない場合も

セカンドオピニオンと聞くと「難しい病気やケガの相談」というイメージがつきまとうかもしれません。

しかし、実際は糖尿病や椎間板ヘルニア、高血圧や高脂血症など比較的身近な病気やケガであっても、受けて構わないのです。

ただし、セカンドオピニオンの本来の趣旨から考えて、そぐわないケースもあることに注意が必要です。

具体的には以下に掲げるケースが想定されます。

  • 主治医の了解を得ずに他の医師の診察を受ける
  • 医療ミス、医療訴訟に関する相談
  • 医療費、各種制度・給付金に関する相談
  • 亡くなった人を対象とした相談
  • 今の治療法が正しいかどうかの判断を前提とした相談

セカンドオピニオンを受ける際の流れ

セカンドオピニオンを受けることは患者の権利ではあるものの、病院ともめないためには

  • 主治医への伝え方に気を配る
  • 正しい手順を理解し、着実にこなしていく

ことが重要です。

セカンドオピニオンを受ける際の一般的な流れについて解説しましょう。

1.主治医に相談する

最初にやるべきことは、主治医に相談することです。

  • 「薬の量を減らしたい」などの希望や、「ケガが全く良くならない」などの不安
  • これまでの治療の経緯

を整理し、その上でセカンドオピニオンを受けたいという意思を伝えましょう。

なお、これまでの治療の経緯を整理する際には

  • 自分や家族が書き留めた病気・ケガの治療に関するメモ
  • お薬手帳

などが役に立ちます。

直接言いづらい場合はソーシャルワーカーや薬剤師に相談を

患者もしくは患者の家族から、セカンドオピニオンを受けたいという申し出があった場合、ほとんどの医師は快くOKを出してくれるはずです。

しかし中には

  • 自身が考える治療方針やこれまでの実績に絶大な自信を持っていて、患者はそれに従ってほしいと考えている
  • セカンドオピニオンに対する誤解があるため、申し出られると「患者は自分のことを信頼していない」と考えてしまう

ため、あからさまに不快感を示す医師も少ないながらにいます。

もし、医師に直接言いづらい雰囲気があった場合は、ソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)や薬剤師に相談しましょう。

医師や看護師と同様、日々患者に向き合い、より良い医療を提供しようとする専門家である以上、上手な伝え方を一緒に考えてくれるはずです。

2.身近な人に相談する

また、平行して身近な人にもセカンドオピニオンを受けることについて、相談してみると良いでしょう。家族や親族はもちろん、友人や知人など、信頼できる人であれば構いません。

身近な人に相談できない場合は…

もちろん、家族や親族、友人や知人に相談できれば良いですが、中には

  • 家族や親族、友人や知人に相談することに抵抗がある
  • 家族や親族に相談したが、セカンドオピニオンを受けること自体を反対された

など、上手くいかないこともあるでしょう。

そのような場合は、認定NPO法人や患者会を頼るのも1つの手段です。

同じ病気を持つ患者自身やその家族、看護師や認定心理士などの専門家が相談にあたってくれます。

認定NPO法人の例「マギーズ東京」

患者やその家族からの相談に当たっている有名な認定NPO法人の1つに「マギーズ東京」があります。

本来は東京・豊洲にある同法人が入居する建物に出向き、看護師・認定心理士に相談するのが通常の流れです。

しかし、時節柄来訪が難しかったり、地方に住んでいたりする場合は、メールや電話でも相談を受け付けてくれます。

3.病院を決める

ここから先は、主治医や家族などの身近な人と意見のすり合わせができ、セカンドオピニオンを受けることを決めた前提で話を進めます。

セカンドオピニオンを受ける際に重要なのが「どこの病院で受けるか」ということです。

  • 雑誌やWebの口コミ
  • 病院が公開している治療実績
  • セカンドオピニオン外来の設置などの受け入れ態勢
  • 自宅からの距離(遠方の場合は交通手段や宿泊施設の確保が必要になるため)

など、様々な要素を勘案して決めましょう。

保険外診療なので注意

注意したいのは、セカンドオピニオンを受ける際は、費用は全額自己負担になるということでしょう。

セカンドオピニオンはあくまで「主治医以外の医師が専門的立場から意見を提供する行為」であるため、治療行為(病気やケガを治すための医療行為)にはあたらないためです。

公的医療保険が適用されない以上、セカンドオピニオン目的で外来を受診した際の費用は、病院ごとに異なります。

例えば、埼玉県さいたま市にある「さいたま赤十字病院」の場合は

  • 30分まで:11,000円(税込)
  • 30分超1時間まで:22,000円(税込)

と設定されています。

出典:さいたま赤十字病院「セカンドオピニオン外来のご案内」

一方、東京都文京区にある「日本医科大学付属病院」の場合は「1相談・1診療科60分を限度として44,000円(税込)」と設定されています。

出典:セカンドオピニオン外来|日本医科大学付属病院

いずれにしても決して安い金額ではないので、事前によく調べ、費用の面も含めて「どこの病院でセカンドオピニオンを受けるか」を考えましょう。

4.主治医に紹介状などを書いてもらう

どこの病院でセカンドオピニオンを受けるが決まったら、準備を始めます。

まず、主治医には必要な書類を手配してもらうよう、依頼しなくてはいけません。

  • 診療情報提供書(主治医作成のもの、セカンドオピニオンを受ける病院宛、診療科指定のあるもの)
  • 放射線画像(CD-ROM等)
  • 検査記録、病理標本等

などが必要になります。内容次第では3 ~ 4週間かかることも珍しくないので、スケジュールには余裕を持ちましょう。

一方、自分たちで用意すべきものとしては

  • 申込書(相談用のシートが必要なケースも)
  • 代理のときは相談同意書
  • 未成年の家族のことで相談したいときはは続柄の確認できるもの(健康保険証、戸籍謄本など)
  • 必要に応じ、お薬手帳のコピーやメモなど「これまでの治療の経過」がわかるもの

が考えられます。これらも、抜け・漏れがないよう、余裕をもって用意してください。

5.セカンドオピニオンを受ける

予約を取った日時になったら、病院に出向いてセカンドオピニオンを受けましょう。

病院によっても多少の差はありますが、専門の受付窓口に予約した時間の10分ほど前に到着するよう指示されることが多いです。

6.主治医に報告書が届く

セカンドオピニオンを受け終わると、セカンドオピニオンを担当した医師が主治医宛に報告書を発行し、郵送します。

報告書が届いたタイミングを見計らい、自分や家族からもセカンドオピニオンを受けたことを踏まえ、話し合いをしたい旨を伝えると良いでしょう。

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