なぜ、病院に行く前にメモを作ると良いのか
評判の良い医師がいる病院・クリニックは混み合いがちです。
当然、自分や家族以外にも患者はいるので、医師が1人1人の患者に割ける時間はどうしても短くなります。
「待ち時間が長い割に、医師の診察の時間が短い」ことを評した言葉に「2時間待ち、3分診療」という言葉がありますが、裏を返すと
医師は3分で患者の今の状況を見抜き、的確な判断を下せるくらいでないと一人前ではない
ということです。
もちろん、患者の話がしどろもどろな場合にまで「3分ですべてを察してほしい」というのは難しい話でしょう。
そこで、患者側からも、準備できることはするのが、お互い快適に診察を受けるために大事です。
理由1.医師に伝えたい情報を整理できる
もう少し、メモを準備することに関するメリットを掘り下げてみましょう。
患者側の理由として挙げられるのは「医師に伝えたい情報を整理できる」ということです。
話すことが上手な人がしている工夫の1つに「あらかじめ、情報を整理して、伝わりやすい順序で話している」ことが挙げられます。
この作業を行うことで、自分がこれから話そうとしていることを的確に理解できるため、話す際もスムーズに進められるのです。
理由2.医師も判断を下しやすくなる
一方、医師にとっても、患者がメモを作って、伝えたいことを整理した上で診察に臨んでくれることはプラスになります。
医師は大学の医学部で様々なことを勉強した上で、医師国家試験に合格し、現場に出ます。
その中で「診察を行う際の流れ」についても勉強しますが、症状を聞く際には以下の点を抑えるように伝えられるのです。
- O(Onset):いつから症状が出たのか
- P(palliative/provocative):症状がよくなる(悪くなる)行動
- Q(quality/quantity):症状の様子
- R(region/radiation):症状の場所
- S(associated symptom):その他の症状
- T(time course):時間の経過
これらは、患者の今の状況を把握する上で大事になる情報と考えましょう。
つまり、患者の話が、これらのポイントを押さえたものだった場合、医師ははるかに診察を進めやすくなります。
例え短時間しか診察に割けなかったとしても、必要に応じて追加で情報を聞き出すことで、的確な判断ができるのです。
医師にとっては「過去にどんな病気をして、どんな治療を受けてきたか」も重要な情報になります。
「前のことは忘れてしまった」ではなく、病気やケガで診察・治療を受けた際は、その都度情報を整理し記録しておくと良いでしょう。
診察の様子を録音できるアプリ「診察ノオト」は、情報の整理、記録にも役立ちます。
メモに必ず書くべき症状に関する5つの情報
なお、既に触れた症状を聞く際のポイントは「OPQRST」という語呂合わせとしても使われるそうです。
それだけ重要な情報であるだけに、医師が診察を行う際や、問診票を書く際には必ず聞かれる項目と考えても良いでしょう。
裏を返すと、事前にこれらの情報をメモに整理しておけば、大分やり取りもスムーズに進むはずです。
この点を踏まえて「診察前に作るメモ」に盛り込むべき項目について解説しましょう。
その1.いつから症状が出たのか
最初の項目は「いつから症状が出たのか」です。「O(Onset)」「T(time course)」にあたります。
たとえば
- 1週間ほど前から頭痛が続いていたが我慢していた
- 半年ほど前から腰が痛かったが、何とか生活できていた
- 昨日の夜中に吐き気と下痢が止まらなくなった
など「具体的な時間、期間」を盛り込んで説明すると、より分かりやすくなるはずです。
その2.何をするとひどくなるか、和らぐか
次の項目は「何をするとひどくなるか、和らぐか」です。 「P(palliative/provocative) 」にあたります。
たとえば
- 頭痛はするが、一晩寝たら治まり、次の日の夜になるとひどくなる
- 首が痛いが、温めると痛みが和らぐ
などが考えられます。
「昨日、焼き肉を食べたけど肉が生焼けだったかもしれない(だから腹痛や下痢がある)」など、自分なりに思い当たる節があるなら、そのことも補足情報として伝えましょう。
その3.今の自分(家族)の症状
次の項目は「今の自分(家族)の症状」です。「Q(quality/quantity)」「 S(associated symptom) 」にあたります。
このあたりは
- 熱
- 鼻水
- せき
- 吐き気
- 湿疹
など、出ている症状を具体的に伝えられるようにしておけば十分でしょう。
その4.症状が出ている場所
「R(region/radiation) 」にあたります。
湿疹やケガ、腰痛やのどの痛みなど「どこが痛いのか」「どこがいつもと様子が違うのか」がわかれば、そこも伝えたほうが親切です。
もちろん、熱などのように具体的にどこが痛いのか、様子が違うのか言葉で伝えづらい場合もあります。
その場合は、症状を伝えれば十分です。
その5.その他の情報
ここまで紹介してきた情報以外にも、医師が診察を行う際に参考情報として使うものは、メモに盛り込んでおくと良いでしょう。
代表的なものに絞って紹介します。
飲んでいる薬
「おくすり手帳」を持っている場合は、そのまま持っていきましょう。
ただし「電子おくすり手帳」(アプリのこと)の場合は、現在進行形で飲んでいるものだけでもよいので、予め紙に書きだしておくのをお勧めします。
現物の薬を持って行っても良いですが、荷物が増える上に紛失するリスクもあるので、まずは情報を整理することを最優先にしてください。
副作用が出た薬
これまでに飲んだことがある薬や、受けたことがある予防接種、治療で何らかの副作用が出た場合、そのことも伝えられるようにしておきましょう。
たとえば
- 痛み止めを飲んだら顔が真っ青になり倒れた
- 風邪薬を飲んだら体中にじんましんが出た
- インフルエンザワクチンを打ったら次の日腕が腫れあがった
など、思い当たる節があればとりあえず書いておきましょう。
アレルギーの有無
副作用が出た薬と同じくらい重要な情報なのが「アレルギーの有無」です。
もし、過去に花粉症やアトピー性皮膚炎、気管支炎などアレルギーが疑われる疾患で、アレルゲン検査を受けたことがあれば、その結果を持っていきましょう。
特定できていない場合でも
- ほこりっぽいところにいると具合が悪くなる(ハウスダストアレルギー)
- エビを食べたら唇が真っ赤に腫れた(甲殻類アレルギー)
など、アレルギーが疑われる症状が出たことがあるなら、伝えておくと良いでしょう。
(女性の場合のみ)月経が始まった年齢、妊娠の可能性や授乳の有無
婦人科を受診する場合はほぼ質問される項目です。
自分や家族が過去にかかったことがある大きな病気、受けたことがある手術
自分や家族が過去にかかったことがある大きな病気(既往症)や受けたことがある手術についても、情報を整理しておきましょう。
特に、以下のいずれかの病気にかかったことがある場合は、その病気が原因で他に症状が出る可能性が高くなるので、重要な情報として医師に伝えてください。
- 高血圧
- 糖尿病
- 肝臓病
- 心臓病
- 腎臓病
- 胃腸病
- 結核・胸膜炎
- リウマチ
- 貧血
- 脳出血・脳梗塞
- 癌
- その他
気になったことがあればひとまず書こう
医師は、専門的な知識・技術を身につけ、日々治療にあたっています。
そして、治療に当たる際は、患者から様々な情報を聞き出し、総合的に判断して最適と思われる治療を施しているのです。
このため、自分や家族にとっては「大したことがないでしょ」と思う情報であっても、実は医師にとっては重要な情報だったということは奥羽にしてあります。
「気になったことがあれば、ひとまず書いておく」くらいの勢いでメモを作って構いません。