電話による医師への相談も有料
自分や家族が体調を崩した場合、どうすれば良いのかわからずに主治医に電話をして相談することがあるかもしれません。これ自体は何ら問題はないのですが、1つ注意すべきことがあります。
それは「たとえ電話での相談であったとしても、医師に相談することは診察を受けたのと同じ扱いになるため、診療費用を請求される」ということです。
命にかかわる病気だった場合は、たとえ費用がかさもうが相談する意味はありますが、様子見で良かった場合はそうとも言い切れません。
医師に相談する際は「どれだけ緊急性が高いのか」をまずは考えてみましょう。
時間外・休日・夜間受診の加算額は?
医師に電話で相談するのは、その医療機関(病院・クリニック)の開院時間外であることがほとんどでしょう。開院時間内であれば、タクシーなどを使って医療機関に赴いた方が早く、的確な診断をしてもらえるからです。
しかし、開院時間外に医療機関に出向いて診察をしてもらったり、電話で相談に乗ってもらったりした場合は、割増料金がかかります。
診療報酬点数上「時間外加算」が上乗せされるためです。なお、具体的な金額は初診か再診かによって異なります。初診の場合と再診の場合とにわけて、詳しく見てみましょう。
初診の場合(6歳以上)
初診料(医科) | 2,880円 |
初診料(歯科) | 2,510円 |
加算額(診療所の診察時間内、夜間・早朝) | 医科 500円 |
加算額(時間外、おおむね6時~8時、18時~22時) | 一般 850円、特例(救急病院など)2,300円 |
加算額(休日) | 2,500円 |
深夜(22時~6時) | 4,800円 |
※実際の支払額は自己負担割合によって異なるので注意
再診の場合(6歳以上)
再診料(医科) | 730円 |
再診料(歯科) | 510円 |
加算額(診療所の診察時間内、夜間・早朝) | 医科 500円 |
加算額(時間外、おおむね6時~8時、18時~22時) | 一般 650円、特例(救急病院など)1,800円 |
加算額(休日) | 1,900円 |
深夜(22時~6時) | 4,200円 |
※実際の支払額は自己負担割合によって異なるので注意
自己都合での時間外受診の場合はさらに上乗せされることも
なお「何となく調子が悪いから」など、緊急性が認められないにも関わらず、深夜などの時間外に医療機関を受診した場合、特別料金が掛かるケースもあります。
主に、大学病院や地域医療機能推進機構傘下の病院などで「時間外選定療養費」という名目で支払いを求められることが多いです。
このような名目で支払いが求められる理由の1つに「緊急性がない状態の人がたくさん診察に訪れることで、本当に緊急性がある人の治療が遅れる恐れがあるから」が挙げられます。
しかしながら、時間外受診のなかには、必ずしも緊急性を認められない方も受診されており、本来の目的である紹介患者及び入院等が必要な重篤な方の治療に支障をきたしているのが現状です。
出典:『時間外選定療養費』のご負担について | 九州病院 | 地域医療機能推進機構
もちろん
- 15歳未満の子ども
- 救急車で運ばれた人
- 妊娠している人
- 事前に医師から「この時間にきてください」と指示があった人
- 一時帰宅をしていた入院患者であって、容体が急変した人
など、緊急性が高い場合はこの限りではありません。
具体的にどういう状態であれば「緊急性が高い」と判断されるのかはケースバイケースであるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
時間外・休日・深夜加算額を払わないためには?
結局のところ、費用の面でも、本当に緊急性の高い患者が治療を受けられるようにするためにも、できる限り医療機関の開院時間外に診察を受けなくても済むようにしておいた方が良いでしょう。
そこで、時間外・休日・深夜加算額を払わない = イレギュラーな診察を受けないようにするためには、どんな工夫をすれば良いのか考えてみました。
常備薬は切らさない
持病があって通院している人であれば、普段飲んでいる薬がいつも手元にあるようにしましょう。薬がなくなったからと飲まないでおいた場合、それだけで体調を崩すことだってあり得ます。
- 薬の在庫も踏まえて医療機関の受診スケジュールを組む
- 医療機関に行く前には「あと何日分在庫があるのか」を確認する
などの工夫を欠かさないようにしましょう。できることなら、地震や洪水などの災害に巻き込まれた場合も想定し、1週間分程度の常備薬を非常持出用袋(リュック)に入れておくとさらに良いでしょう。
「在庫がありません」と言われたら?
また、注意したいのが「薬が品薄になった場合どうするのか」ということです。特に、普段からジェネリック医薬品(後発医薬品)を使っていた人は注意しましょう。
2021年12月には、ジェネリック医薬品を製造するメーカーで製造工程違反などの不祥事が相次いだことや、不祥事を起こしていないメーカーが供給調整をしたことなどが理由で、薬局に薬が入ってこないというニュースが報道されました。
国が普及を促す安価なジェネリック医薬品(後発薬)の品薄が続き、混乱が広がっている。メーカーの不祥事で出荷停止が相次いだことなどが原因で、薬局は薬の確保に苦労し、飲み慣れた薬の変更を余儀なくされた患者は不安を抱える。供給体制の正常化には時間がかかり、混乱は長期化しそうだ。
出典:ジェネリック品薄「いつもの薬入らない」影響3000品目…処方変更も|【西日本新聞me】
仮に、自分が飲んでいる薬が確保できないと言われた場合は、医師と話し合いをし
- 先発品を使う
- 同じ効き目の他の薬に変更する
などの対処法を早めに決めておくのをおすすめします。
体調を崩したときにどう行動するかをすり合わせておく
がん、心筋梗塞など長期間の治療が必要で、しかも容体が急変しやすい病気にかかっている場合は、医療機関の受診をためらったことが原因で、短期間で万が一のことが起きてしまう可能性も出てきます。
このような病気の治療中である場合は、あらかじめ主治医と「体調を崩したときにどう行動するか」をすり合わせておきましょう。
できれば「どのような病状になったら医療機関を受診するのか」というチェックリストを作成すると良いかもしれません。
また、日常生活における注意も聞いて、家族や介護にあたる人が全員で情報を共有しておくようにしましょう。デイ入りしている訪問看護師やヘルパーがいる場合は、この人たちへの情報共有も大事です。
なお、情報共有をするためには、主治医の言っていることに基づき、正確な情報を仕入れる必要があります。主治医の話を録音できるアプリ「診察ノオト」を上手に活用しましょう。
電話相談やアプリを使う
一方、長期間の治療が必要で、しかも容体が急変しやすい病気にかかっていなかったとしても、急に体調を崩すことだってあり得ます。
「ただの腹痛?と思っていたら実は急性膵炎だった」など、放置していれば命に関わる病状になっていることもあるので、油断してはいけません。
それでも、自分や家族だけでは判断できないという場合は、電話相談やアプリを使いましょう。
救急安心センター事業とは
まず、電話相談ですが、救急安心センター事業といって、一部の都道府県で救急車の適正利用を目的にした電話相談が実施されています。
「#7119」に電話をかけると、、医師や看護師等の専門家が救急相談に応じてくれ、状況次第では救急車の出動要請を行ってくれるというものです。
「Q助(きゅーすけ)」とは
また、アプリですが消防庁が大阪大学と合同で開発した「Q助(きゅーすけ)」というアプリ、Webサイトがあります。
これは、アプリやWebサイト上で表示される質問に答えていくと
- 今すぐ救急車を呼びましょう
- できるだけ早めに医療機関を受診しましょう
- 緊急ではありませんが医療機関を受診しましょう
- 引き続き、注意して様子をみてください
のいずれかで診断結果がでてくるというものです。
なお、アプリであればスマートフォン上でも使えるため、結果が表示されたらスクリーンショットを撮り、医療機関での受診の際に医師や看護師に見せるという使い方もできます。
緊急時は迷うことなく病院へ
既に触れた通り、むやみやたらに時間外・休日・深夜に受診をするのは、費用の面や緊急性の高い患者の治療の機会という面から、望ましいものであはありません。
しかし、明らかにいつもと様子が違う場合は、迷うことなく医療機関を受診しましょう。
ちょっとした判断の遅れが生死を分けることだってあり得ます。なお「いつもと様子が違う」が具体的に何を指すのかは、こちらの記事でも詳しくまとめているので参考にしてください。