病院の領収書の再発行はハードル高。失くした場合はどうすべき?

病院の領収書の再発行はハードル高の理由

医療費控除を行う際、病院をはじめとした医療機関の領収書を提出する義務こそないものの、5年間手元に保管しておくことが義務付けられています。

つまり「医療費控除を行うには領収書は必要」という前提がありますが、万が一何らかの理由で領収書を紛失してしまった場合、どうするかが問題になるでしょう。

大抵の人は「領収書を再発行してもらうよう頼めば良いのでは?」と思うかもしれませんが、これはなかなかハードルが高いのも事実です。

その理由を2つ、解説します。

理由1.再発行に応じることが義務付けられていない

「病院・クリニックで治療費を払ったら、領収書をもらう」ように、何らかの商品・サービスを購入し、その対価として支払いをした場合は、支払ったことの証明として、支払った側から領収書を発行してもらうよう請求できます。

民法第486条第1項
弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。

しかし、領収書を紛失したなどの理由で、再発行を求めた場合の扱いについては、明確に規定されていません。

事実上、再発行に応じることが義務付けられていないため、実際に応じるかどうかは相手次第の部分があります。

理由2.不正利用されるリスクがある

加えて、病院・クリニックに限らず領収書には「不正利用されるリスク」があるのも事実です。

「領収書を紛失した」と言って再発行してもらったものの、実はもともとの領収書があったケースを考えてみましょう。

再発行してもらった領収書はいわば「実際の支払いがないのにも関わらず、発行された領収書」になります。

実際にやる人はごく少数のはずですが、その再発行してもらった領収書を不正利用して、医療費控除の額を計算し、結果として本来支払うべき税金よりも少ない金額の税金を支払うことも、仕組み上はできてしまいます。

これは、れっきとした領収書の不正利用である以上、病院・クリニックとしてはそのような行為に手を貸せないのは当然です。

不正利用を防止する観点から、領収書の再発行には一律応じないという姿勢を取っている病院・クリニックは多く存在します。

数は少ないながらに再発行に応じてくれる病院・クリニックもありますが、その際にも「もし、もともとの領収書が出てきたら、出てきた方は破棄するように」求められるはずです。

病院の領収書を失くした場合はどうすべき?

結局のところ、病院・クリニックの領収書を再発行してもらうのは、かなりの至難の業と考えましょう。

領収書を失くした場合はどうすべきなのか、現実的な対応策を解説します。

そもそもなぜ領収書が必要なのか

本題に入る前に、そもそもなぜ領収書が必要なのかについて考えてみましょう。

医療費控除において領収書を5年間手元に保管しておかないといけない理由を一言でまとめると

医療費を「いつ」「どこで」「いくら」支払ったかを客観的に立証できる資料であるため

です。

医療費控除の手続きを含め、税務上の手続きでは「その人が本来納めるべき税金を適切に計算し、期限通りに納められるか」が問題になります。

そして「その人が本来納めるべき税金」は、可能な限り客観的な証拠に基づいて計算されるべきです。

そして、後々に置いて何らかの確認すべき部分があれば、一定期間さかのぼって確認できるほうが望ましいでしょう。

このような背景があるため、医療費控除においては、申告から5年間、病院・クリニックの領収書を保管しておくよう呼びかけられています。

病院の領収書を失くした場合の対応

不注意で紛失してしまった、捨ててしまったなどの理由で、病院・クリニックの領収書を用意できない場合でも「可能な限り証拠を残しておく」ことが大事です。

自分でできる3つの対応策について解説しましょう。

対応1.「医療費のお知らせ」を代用する

会社員・公務員であれば、加入している健保組合・共済組合が「医療費のお知らせ」を発行していることがあります。

これは、健保組合・共済組合が加入者に対し、1年間に支払った医療費について通知するために作られているものです。

出典:令和2年度の「医療費のお知らせ」を送付します | お知らせ | 全国健康保険協会
  • 被保険者等の氏名 
  • 療養を受けた年月
  • 療養を受けた者
  • 療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称 
  • 被保険者等が支払った医療費の額 
  • 保険者等の名称

の6点が書いてあれば、医療費控除を受ける際の添付書類として提出できます。

参照:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁

極めて証拠として使える可能性が高い書類であるため、コピーを取って手元に保存しておきましょう。

最近はインターネットで照会できることも

また、最近ではインターネットでの「医療費のお知らせ」に記載された内容の照会に応じている健保組合・共済組合もたくさんあります。

健保組合・共済組合によってやり方は違いますが、インターネットで紹介した「医療費のお知らせ」であっても、プリントアウトして手元に残しておけば、証拠として使えるでしょう。

対応2.支払証明書を発行してもらう

病院・クリニックに対し、いくら医療費を支払ったのかの客観的な資料になりうる書類の1つに、支払証明書があります。

領収書の支払自体は断られても、支払証明書であれば対応してくれる病院・クリニックも多いので相談してみましょう。

病院によって料金はまちまちなので要確認

なお、支払証明書の発行は、治療行為ではない以上、公的医療保険の対象外です。事務手数料も病院・クリニックが独自に決めて構わないことになっています。

無料の場合もあれば、1通3,000円 ~ 5,000円かかるケースも珍しくありません。

金額次第では、医療費控除で減額される税金よりも、事務手数料のほうが高くつくことすらあるので気を付けましょう。

対応3.必要事項をまとめたメモを作り相談する

「医療費のお知らせ」も受け取れず、支払証明書の手配もできない、となった場合でも諦めるのはまだ早いです。

医療費控除において大事なのは

医療費を「いつ」「どこで」「いくら」支払ったかを客観的に立証できること

です。

そこで「医療費のお知らせ」に記載されていた

  • 被保険者等の氏名 
  • 療養を受けた年月
  • 療養を受けた者
  • 療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称 
  • 被保険者等が支払った医療費の額 
  • 保険者等の名称

6つの項目をまとめたメモを作り、税務署に相談しに行きましょう。

なお、これらのメモは病院・クリニックの受診記録があるとよりスムーズに作れます。病院・クリニックの受診記録代わりに使えるアプリ「診察ノオト」も活用しましょう。

他にも

  • お薬手帳、アプリ
  • 診察の記録
  • 病院・クリニックの診察券

等、証拠になるものがあれば持っていくとなお良いでしょう。

認めてもらえるかどうかはその時の状況次第ですが、何の裏付けもない状態で医療費控除の手続きをし、後々になってトラブルになるよりはましなはずです。

ゆっくり相談したいなら2月上旬までに

なお、確定申告の中でも、還付申告(払いすぎた税金を戻してもらうための手続き)は、翌年の1月1日から可能になります。

医療費控除だけをする場合、還付申告に該当するため本来の確定申告の期限(例年2月16日から3月15日まで)よりも早めに済ませられるはずです。

領収書を失くしてしまったことに関し、税務署に相談したい場合は、できる限り前倒しで相談・手続きを始めましょう。

本来の確定申告の期限になると税務署は混み合うため、ゆっくり相談したい場合は2月上旬までに一度出向くのをお勧めします。

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